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約1㎞歩き、俺は賑やかな町に入った。
左右には赤い煉瓦造りの建物が建ち並んでいる。
広場には市場が出ており、人々に押されながらなんとか流れから抜け出した。
裏道に出ると、さっきの賑やかさとは反対にどことなく寂しさの感じられる情景だった。
まだ就職先の見つからない男性がベンチに座っていたり、シャッターで閉められた店がいくつか見当たった。
しばらく歩くと、大きな赤い煉瓦の家が見えて来た。
そこがパルスおじさんの自宅だ。
宮殿までとはいかないが、とにかく大きな家だ。
初めて見た時は、驚きすぎて放心状態に陥ったくらい。
俺は大きな門にぽつんとあるチャイムを鳴らした
すると、門の向こうで扉の開く音がした
ザッザッとこっちに向かってくる足音が聞こえる
ギィイと重い門を開けたのは上下花柄の洋服にカーディガンを羽織った50ぐらいの老女、サラン・ウェートだった。
「あらぁ、エイルじゃないのぉ。もう洋服が仕上がったの?今回は随分早いじゃないのぉ。」
そう、俺達は服の手直しをしてお金を儲けている。
服の仕事は大半はメルがやっているが、メルもそこまで強くはないから家で子供達の世話をしている。
俺はと言うと、町の酒屋や部品を作る仕事などをしている。
俺は紙袋をサランおばさんに渡した
「いつもありがとうございます。感謝してます。」
「そんな大したことじゃないわよぅ。うふふッ。」
パルスおじさん、サランおばさんには今までたくさんの支援をしてもらってきた。
わざわざ町外れの家にまでやって来ては服の手直しを頼みに来てくれる。
時には通常の料金の2倍も支払ってくれることもあり、本当に感謝している。
「もうすぐパルスも帰ってくる頃だから家に上がってちょうだいよ、おいしいアップルパイもあるのよ。」
サランおばさんは家の中へ招き入れる動作をした
「……残念なのですが、今日はレインの誕生日なので早く帰らないといけないんです。すみません。」
「あらッレインのお誕生日!?ちょうどいいわ、アップルパイを持っていって!レイン好きだからッ。ちょっと待ってて、包んでくるわねッ。」
そう言うと、サランおばさんは家の中へ駆け足で入っていった
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