第一夜:序 hajimari

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そして現時刻、蒼京の中央都、道行く道に流れる大勢の人々の中に歩を進める二人、棗明日香と刹那がいた。 「怖いよね~最近の蒼京ってさ、怪事件ばっかりだよねあす兄」 隣で不安気に話かける刹那の顔が、明日香にしてみればこの手の話は、あぁ、またか。 で終わってしまうのだが刹那はそうはいかず何処までも引きずってしまう、兄よりも心が繊細とでも例えようか。 「怖いのか?」 問い掛ける明日香。 「うん‥ちょっちね‥‥あす兄っていつもそんな感じだけど怖いとか無いの?」 「無いな…むしろどうして事件を防げなかったのか警察の馬鹿話に耳を傾ける」 いつもそう、刹那が明日香に感じる世間への目は鉛玉の様な冷たさしか感じる事が出来なかった。 いつも一つ先を行く兄の姿を見た妹は次第に憧れから何時しか不安へと変わっていた、まるで何かが違う存在に変貌しつつあるのかと、時としてそれが心から恐怖として抱く事も決して少なくはなかった。 「………やだよ…」 「あ?」 「あす兄は…ずっと僕のあす兄だからっ!」 突然の訴えかけた刹那の表情に只驚き立ち止まってしまう。 「な…何だぁ!?いきなり大声だすなよ!」 「ごご…ごごごごごっごめんっ!あぅ、恥ずかし!!」 頭の先から下まで一気に赤く染まると刹那は一目散に走り去る、見間違いか刹那の目元に大粒の涙が落ちていく様にも見えたが。 「たくっ、マジでなんなんだよ今日は!」 後を追うように明日香も走り出す。気づけば二人が通う学校はもう目の前だった―――。
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