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「おはよう、イヴ」
カイトは寮を出たところで“たまたま”そこを通ったイヴに声をかけた。
「なによ、気安く声をかけないで」
イヴはふんと顔を背けると歩き出した。
カイトは当惑の表情を浮かべて立ち尽くしている。
(あぁ~もう、私のバカバカ。何でもっと優しい言葉をかけられないの!?)
もちろん、通りかかったのだって偶然じゃ無い。
寮の入り口のところでずっと待ってて、緊張ではち切れそうな気持ちだった。
予行練習だって、散々やった。
おはようって言われたら、おはようって返事をした後、一緒に学校に行こうって言うつもりだった。
途中で、半徹夜して作ったお弁当も渡すつもりだった。
もし、途中で手を繋げたら良いな、なんて思ってた。
しかし、実際に前にすると出た言葉は予定と正反対。
「はぁ……」
イヴは重いため息をつきながら校門を潜った。
周りのカップルをいつも以上に強く睨む。
黒いオーラは犧無での黒魔術を可能にするだろう。
「どうしました、イヴさん?」
「ほぇ?」
突然話しかけられたので気の抜けた声を出してしまった。
見上げると薬品学担当の夕凪先生が箒を持って立っていた。
「そんなに殺気を放つと周りの人が怖がりますよ」
言われて見れば、イヴを中心として、半径2メートル程の円陣が組まれている。
中にいるのはイヴと、夕凪先生くらいだ。
「悩みが有るなら話を聞きますよ?」
そう言うと夕凪先生はにっこりと笑った。
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