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陽太は、内心ドキドキしていた。しかし、幽霊など怖くないと言ったが為に、引き下がる事が出来なかったのだ。
「良いか、開けるぞ?」
震えた声で、他の2人に言う。返答は分かっていた。
「当たり前だ。早く開けろよ」
孝太郎が、苛ついた口調で催促をした。迷いは感じられない。
「そうだ、早く開けろ。もしかして、ビビってんの?」
孝太郎に続き、哲哉が溜め息を含ませて言う。
2人に急かされた陽太は、脅える心に鞭を入れた。
「馬鹿にすんな、怖くねえよ」
そう言って、コの字型のドアノブに手を掛ける。
躊躇うと恐怖が増すばかりだと考え、一気に扉を押し開いた。
木製の黒くて大きな扉は、長年開閉されていなかった事を示すかの様に、耳障りな音を立てながら館内と外を繋げた。
それと同時に埃が立ち込め、3人は手で口許を覆い咳き込む。
西日が射し込み、僅かに館内は見えるが、どうにも薄暗い。
「おい、早く点けろよ」
哲哉に背中を小突かれた陽太は、地面に置いてある懐中電灯を拾い上げて館内を照らした。
最初に灯りが照らしたのは、小さなカウンター。入り口の正面に設置されており、来館者の受け付けをする場所だった様だ。
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