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ゆらゆらと揺れる灯りが、陽太の鼓動と重なる。
木目調のカウンター上には、パンフレットや様々な文具が散乱しており、雑然としていた。
外では9月の熱気が猛威を振るっているというのに、館内は驚く程の冷気で満ちている。
「おい、何ぼさっと突っ立ってるんだよ。早く行こうぜ」
「分かってるよ、押すなって」
孝太郎に背中を押され、陽太は拗ねた声を漏らしながらゆっくりと館の中へ足を踏み入れた。
片足に体重を乗せる度に、木造の床が鈍い音を立てて軋む。
館内の構造を把握していない為、陽太は先ずカウンターの前へと足を運んだ。
雑然と置かれた文具の下敷きになっているパンフレットを手に取り、埃を払って頁を捲る。
「あった、館内の地図だ」
お目当ての館内図を見付け、そこへ灯りを向けた。2人も陽太の左右から覗き込んでいる。
どうやら、館は左右対象の造りで、地上3階建ての様だ。
陽太達の居るカウンター前を中心として、細長い通路が左右に伸びている。
通路にはそれぞれ2つの部屋があり、カウンターの後ろには、小さな事務所があるらしい。
「あれがそうだな」
哲哉の一言で、陽太はカウンター内の奥へと灯りを向ける。
そこには、館内図が示す通り、事務所の扉があった。
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