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深い深い森。
好き勝手に草木が生え、道すらない森の奥は、木漏れ日さえなく薄暗い。
そんな森の中を二人の人間が歩いていた。
一人は腰まであるストレートの金髪と宝石のように碧く大きな瞳が特徴的な小柄な少女。
髪の上の方を真っ赤なリボンで結っており、歩く度に尻尾のようにゆらゆら揺れている。黒いブーツを履き、白いブラウスに黒のフリル付きのワンピースを重ね、同じくフリル付きの真っ白なエプロンを身につけた何とも愛らしい格好だ。
もう一人は緋色と紫暗のオッドアイの青年。
襟足が長い真っ白な髪は前髪だけ右が長いアシメで切れ長の紫暗の瞳を見え隠れさせ。ボタンを二つ開けたシャツの上には黒いベストと赤いネクタイが、開いた胸元や腕にはシルバーアクセを光らせている。黒のレザーパンツが細く長い足を強調させる、モデルのような長身痩躯だ。
明らかにその場にそぐわない異様な二人組は、その事をたいして気にする風もなく、障害となる草木を掻き分けながら歩を進めていく。
「……あーっ、うざったいっ」
暫くして少女が不機嫌な声をあげた。目の前の薮をガシガシと踏みつけ溜まり始めたストレスを発散する。
「仕方ねーよ、アリス。第一、行くっつたのは自分だろ?」
「そうは言ったけどね、白兎。こんな奥地だなんて聞いちゃいないわよ。ましてやここまで獣道だったなんて…」
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