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うなだれるアリスの頭を、白兎はくしゃっと撫でると、皮肉っぽく笑った。
「たぶん後少しで着くだろーけど、ここで帰るか?手ぶらで。何一つ得るもんもなく、無駄な労力の消費しかしちゃいねーけどさ」
「冗談っ!!行くに決まってるでしょ。ここまで来たらとことん行くわよ。
これで何もなかったなんてなったら、あのペテン師ヤローただじゃおかないんだからっ…」
フンと鼻を鳴らし意気込むとアリスは白兎を引き連れ、さらに森の奥へと向かって行った。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
事の起こりは数時間前に遡る。
アリスと白兎はふかふかの豪華なソファーに腰掛け、優雅に紅茶を飲んでいた。
「やあ、アリスに白兎。わざわざ出向いてもらってすみませんね」
その声とともに一人の男が二人の前に現れた。
白兎と同い年くらいの長身で華奢な青年。燕尾服をきっちり着こなし、チェーンの付いた眼鏡を掛けている。短い漆黒の髪の上には大きなシルクハット、手袋にステッキと、まるで手品師、あるいは執事と思わせるような出で立ちだ。
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