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「三成殿!こちらです!」
待ち合わせ場所には既に幸村の姿があった
正直言って幸村の姿を目にした瞬間、驚きのあまり一瞬だけ息が止まった
なんと言っても、幸村はうちわを片手に可愛いらしい白い布地の浴衣を身に纏っていたから
それも、男物ではなく女が着るような浴衣で
「ゆき……それ、は…」
三成は真っ青になりながら汗をだらだらとかいている
幸村は三成の指摘に、気まずそうに頬をかき、直後俯き加減に目を伏せ
「すみません……やはり気味が悪いですよね…」
苦笑い混じりでそんな事を言われてしまい、三成は勢いよくぶんぶんと頭を振った
あまりに勢いよく振り過ぎて目眩がしてきたが
「そんな事はない!……可愛いぞ、幸村……」
真っ赤になりながら幸村の浴衣姿を改めて、まじまじと見つめ直す
可愛いと、可憐だと
本当に、正直にそう思った
可愛いと言われた瞬間、かぁっと幸村の顔が真っ赤になったのは気のせいではないだろう
「……三成殿こそ…素敵です……」
真夏の橋のど真ん中
男二人でお互いの姿を誉めあい、お互いの言葉に照れあう姿はハタから見たら滑稽だろうが
しかし今の自分達にはそんなのお構いなし
三成は軽く咳ばらいをし、幸村に手を差し出し
「行くか」
そう、ただ一言
幸村以外には絶対に向けないであろうとびきりの笑顔を幸村に向け、更に手を差し出しながら言い
幸村もおずおずと三成の手に手を重ね
はい
そう、静かに頷いた
始めは兼続コノヤロぅと思っていた気持ちも、幸村のこんな綺麗な笑顔を見れたんだから浴衣を着てきてよかったと
兼続に少しは感謝してやるかと
そういう気持ちになれる
三成は僅かに口許をあげ、幸村と一緒に夜の人込みの中へ向かった
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