曼珠沙華 <文語体>

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曼珠沙華 <文語体>

ぱあんと、爆(は)ぜた樣に見えた。 赤い花が膨張して、鮮やかな音と共に破裂して仕舞つた――樣に見えたのだ。 ――嗚呼、幻だと云ふのだらう? 私にも現(うつつ)だと云ふ自信が無いのだ。 さう、彼處(あそこ)にゐる貴女が、幻でないと云ひ切れないのだ――。 貴女は、眞(ま)つ赤な曼珠沙華に圍(かこ)まれて、獨(ひと)り佇んでゐる。 「彼岸(ひがん)と此岸(しがん)を繋ぐのよ」 何を尋ねるでもなく、貴女はさう云つた。 秋風は脚と脚の間をすり拔(ぬ)けては、赤い花を搖(ゆ)らした。 「彼(あ)の人に逢はなくては――」 曼珠沙華――彼岸と此岸の通ひ径――別名、死人花。 ――此岸に在り乍ら、彼岸に憧れる華よ――
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