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無知なる神に花束を <文語体>
ふわりと、花の香りがした。
香りを辿つて振り向くと、其處には、赫き髪の少年が両手一杯に花を抱き抱へてぢつと私を見てゐるのだつた。
少年は、少し怒つたやうに云ふ。
「あんたは何にも分かつちやあゐないンだ。
全部知つてゐるやうな振りをして、本當は何にも解つちやあゐない。
判つた振りして無視してゐるが、何にも知らないンだから如何にも仕樣が無いンだろう?
救へない。
嗚呼、救へないのはお前ぢやないか」
結局お前は何にも救へないンだろう?
然う、苛ついてゐるやうに少年は云つて、優しき香りの花束を差し出す。
「無知なる神に花束を。」
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