第1章

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午前8時40分                       ジュネットはバートレットの機の後席に座っていた。      「ジュネット、頼むから目の前の機器を触らないでくれ。あんまり楽しくないことになるからな」 機は、エプロン(誘導路)を抜け滑走路の待機位置についた。  「タワーよりハートブレイクワン離陸許可。直ちに離陸せよ」  「ハートブレイクワン、了解」 バートレットはスロットルレバーをアフターバーナーまで押し込み一気に離陸速度まで上げた。  「ジュネット、外を見とけ、中々綺麗なもんだぞ」       幾らか高度を取ったとき、前席のバートレットが声を掛けた。  ジュネットは外を見た。    「下から見る空とはまた一味違うものがありますね」      「ああ、これこそがパイロットの特権だ、写真撮っとけよ」   「ええ」           一言答えて、ジュネットはカメラを構えてシャッターを切った。 「ハートブレイクワン、これより空中待機に移る」       「タワー了解。引き続けて離陸を許可する」          2人の下5000フィートでは、ナガセのF-5E「タイガー」が離陸態勢に入っていた。                                                                  2番格納庫                         ユリアンは離陸していく仲間達を眺めていた。         「おやじさん、修理は?」   「今、最終チェックだよ」   おやじさんがユリアンの隣に歩み寄った。           「どうかしたのかい?」    「・・・なんか嫌な予感が・・・心が騒めいてます」      「君の感が外れてる事を祈るしかないね」           「全くです」
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