第1章

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2010年     9月23日ランダーズ岬沖                                      ケイ・ナガセ―                       編隊を組み直した私の耳に隊長の怒鳴り声が聞こえてきた。   「無茶言うな、新米共の面倒見てんだせこっちは」       「通信司令室よりウォードッグ、不明編隊のコース、ランダーズ岬を基点に278から302」  私は気付いた。領空侵犯の編隊がこちらに向かっていることを― 「バートレット大尉、サンド島の貴隊しか間に合わない」                   ―とんでもないことになった―                私はそう思った。恐怖感とかそういったものは感じなかった。  そんな時だったから“死”なんて頭の片隅にも浮かばなかった。                ・・・そして、私はこの後暫くの時を経て“死”を理解することになった。                                                        アルベール・ジュネット―                  「仕方ねぇ、教官機だけで行く。ベイカー、スヴェンソン、後ろにつけ。訓練機は低空に避退しろ」隊長が言った。        ・・・まさか・・・      「隊長、この機は?」     「悪いな、ジュネット。失神するならしろ、そっちの方がましだ。何たって本気の戦闘機動だ」  「・・・分かりました」    「さて、行くぞ」       双発のエンジンが唸りを上げる。キャノピーの上を1機の教官機が飛んでいった。        そして私はカメラを回し続けた。そして、撮れるものは撮ってやるジャーナリズム精神が疼いた。 そして、私のジャーナリズム精神はこの戦いで満たされるのだった
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