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その時分廊下にいた富士山学園の生徒達は皆が我が目を疑うことになる。
──"あの"薬木罅野が土下座をしている。それも、一般の女子に向かって。
誰かが幻かと思い目を擦っても廊下の真ん中で繰り広げられているシュールな光景は変わらない。
罅野は土下座する姿まで世界一だった。
折り曲げた背筋ですら無駄に美しい。
だが今はそれどころではない。正直背筋とかどうでもいい。
何がどうしてどうなって、"あの"薬木罅野が土下座なんてことをしているのか。彼らの頭にはもうそれしか浮かばない。
そして沈黙の中、一人伏せていた罅野が口を開く。
「君の奴隷になりたいんだ」
「「「…………」」」
時が止まった。
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