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「「「…………」」」
何もかもが固まっている。それはもう、氷河期なんて目じゃなかった。今なら火山だって凍り付く。
凍っていないのは薬木罅野、彼だけである。
「………?」
当の罅野は返事がなかったのを不審に思ったのか一人首をかしげている。
その首を傾ける仕草でさえ美し(以下略)なのだが次の彼の言葉により廊下は二度目の氷河期を迎えることになる。
「……聞こえなかったのか?すまない、もう一度言おう。──俺を君の奴隷にしてほしい」
もうやめてくれ。
野次馬達の心は一つになった。
これ以上自分達の薬木罅野像を壊されてはかなわない。
本来、薬木罅野は周りから何があっても平静を崩さない、世界最強として世界最強な強く美しい人物と認識されている。
──…それがどうだ。
土下座したまま静止し、奴隷宣言をして少女の返事を待つ薬木罅野は正直誰から見ても犬のようだった。
「何があった」としか言いようがない。というか、一体何に目覚めた。
目の前の現実は彼らに世界最強薬木罅野像を正しく崩壊させていた。
その時、
「じゃあ、お願いします」
「「「…………」」」
三度目の氷河期は訪れた。
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