第一章……高校受験

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こんな流れで、つむぐの高校受験は私立を受ける寸前に、県立への変更を余儀なくされた。 「ごめんね。つむぐ。私立は無理かもしれない。」 つむぐの母・千恵子(チエコ)は、つむぐの父・卓郎(タクロウ)がリストラされた翌日の夜、申し訳なさそうに深刻な声で告げた。 「あ、そう。分かった。じゃあ県立にするよ。」 千恵子の深刻そうな様子とは裏腹に、つむぐはまるで明日の予定を決めるかのような軽さで言った。 その軽さといったら、それを聞いた千恵子が呆気にとられ、『分かった。県立にするよ…って、本当にいいの?後悔しない!?』と慌てて聞き返したくらいだ。 千恵子の横で二人の会話を聞いていた卓郎は、 つむぐのこのクールさは誰に似たんだろうか。俺のお袋かな? などと余りの驚きに思考が飛んでしまっていた。 「いいよ、別にそんなにこだわってないし。」 恐らくこの時、世間知らずの中学生が家族の中で一番冷静だっただろう。 「つ、つむぐぅ…!ごめんねー!」 千恵子はつむぐに抱きつき泣き始めてしまった。 「お、おい。千恵子…」 卓郎も千恵子をなだめようとしているが、目には今にも零れそうな程涙がたまっている。 そうして千恵子は5分程泣き続けた。     
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