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陸斗も托斗と同じく市で一、二を争う"霧龍"の総長。
「陸斗…コイツ女じゃねえ…」
「あ゙ぁ!!?」
頭をもう一発殴った。托斗は顔を歪めている。
「話が読めねぇんだけど…」
腕を組みながら私達の近くに座る陸斗。
さすがにこの家で一番落ち着いているだけあって冷静だ。
「俺がちょっと酒買ってこいっていっただけなんだぜ…?」
唇を上げて幼い子供のように話す托斗。誰だよコイツ、と兄弟ながら思う。
「そりゃお前が悪いだろ、まだ実華は16歳だぞ」
そういって陸斗は腰を上げた。
乱暴に倒されている托斗の髪をわしわしと触ると部屋を出ようとした。
「俺が行ってやるから托斗もついてこい」
陸斗は有無も聞かず実華の部屋から去っていった。
陸斗の知り合いの酒屋さんがあるのでそこに行くつもりだろう。
「おい!待てよ! じゃあな、実華!!」
陸斗は笑いながら手を振ると部屋から出ていった。
托斗の荒々しい足音が聞こえなくなるとまた部屋は暑い静かな部屋に戻った。
耳にはうるさいほど聞こえるセミの鳴き声を消すかのように玄関で騒ぐ托斗の声。
「…あちー」
私はその言葉をまた繰り返した。
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