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藤田「失礼します。」
ノックをして病室へ入る。そこを紺野は笑顔で迎える。
紺野「おかえり藤田君。」
藤田「あ、あぁ…。」
藤田は少し【おかえり】という言葉に懐かしさを感じながら、自然とベットの隣りにある椅子に腰掛ける。
紺野「さっきは言い忘れていたんだけど、藤田君は私を助けてくれたんだよね。」
藤田「依頼の延長線だ。仕事のためだ。別に助けようと思って助けたわけじゃない。」
藤田は冷静に表情を変えずに言う。しかし、紺野は首を横に振った。
紺野「ううん。助けてくれたんだよ。本当に…ありがとう…。」
紺野は顔を赤く染めながら言った。
藤田「別に礼を言われることじゃないよ。」
と言いながらも少し照れる藤田。そして暫く沈黙が続く…。
藤田「んじゃ、俺は帰るよ。」
藤田は立ち上がり、足早にドアに手を掛ける。
しかし、それを制するように紺野が口を挟む。
紺野「あ!あのっ!」
藤田「ん?なんだ?」
紺野「あの…そ、その…。」
顔を赤く染めながら、紺野は歯切れ悪く言う。
紺野「藤田君。また…来てくれますか?」
恥ずかしがりながら悲願するような目で藤田を見る。
藤田は一瞬だが、堅く笑った。
藤田「あぁ。勿論また来るさ。俺は君の味方なんだからな。」
紺野は藤田の言葉を聞いて安心したように笑った。
紺野「本当ですか?約束ですよ?」
藤田「あぁ。約束だ。」
紺野「守らないと針千本ですからね。」
藤田「承知の上だ。」
紺野は輝くように笑った。今日見た笑顔の中で一番の輝きだった。
その笑顔を向けられながら藤田は病室を出て行く。
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