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藤田が病室に入ると…。
そこは一面白一色。白い壁に天井。白いカーテン。そこに窓の外の風景が僅かに色を足している。そして、白いベットの中に彼女は居た。【紺野さくみ】。
長い黒髪。人形のように整った輪郭。白い肌。細い腕。
その一つ一つに藤田は再び見とれてしまった。
彼女の黒い瞳が藤田を見て口を開く。
紺野「失礼ですが、誰ですか?」
その言葉で藤田は我に帰る
藤田「俺は藤田。藤田浩次。依頼者の申請があって来た。」
紺野「藤田君ですね。私は紺野さくみ。」
藤田「あぁ。紺野さん。」
紺野「さくみでいいですよ藤田君。」
藤田「………?」
藤田は一瞬だが動揺した。
紺野「私のことはさくみと呼んで下さい。」
彼女は笑顔を向けて言った。まるでその名前で呼ばなければいけないように。
藤田「…了解した。さくみ。」
紺野「はい。藤田君。」
その後、藤田は紺野と話していた。
最初は依頼に関係する事柄を話した。彼女は施設内に誘拐された女子だということ。そして誘拐前の記憶を抹消されたので親も分からないらしいこと。
次は彼女の提案で藤田は自分のことを話した。何故【依頼】を生業としているのか。家族は居ないのか。
普通の人ならば、申し訳なさそうに暗い顔になってしまう話題も、彼女は真剣に話を聞いていた。そして、いつの間にか藤田と紺野は2人共友人のように溶け込んでいた。
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