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優雅は初めて、朝食を他人と摂った。
今まで一夜限りの「付き合い」しかした事がなかった。
「情事」を終えた後は、朝早くにその場を去っていく。
名前なんて聞かないし、教えない。
愛なんかで生きていけるだなんて誰が言う?
馬鹿げてる―。
愛なんて煩わしいものだろう?
ただの快楽のスパイス。
他人と関わるなんて、くそ喰らえだ。
優雅はいつもそう思ってた。
だからこんなに「抱き合う」以外で他人と向き合うだなんて、したことない。
用意された服はきっと、朝イチで買いに行ったんだろう。
用意された朝食はきっと、暖かい味がするんだろう。
微笑む男の瞳には、きっと照れ隠しをする俺の姿が映されているんだろう。
目の前に腰を下ろす男を見つめながら、優雅はずっとそんな事を考えていた。
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