番外編「サクラ」

3/49
前へ
/51ページ
次へ
頼んだカクテルが優雅の前に差し出された。   カクテルの名前は「ブルー・ムーン」   薄紫の綺麗な色彩、ほのかに香るスミレの花の香り。   優雅はこれがお気に入りだった。   少し口づけると甘酸っぱい味。   優雅はぼんやりとカクテルを見ていた。   すると、誰かが自分の横に腰を下ろした。   そして突然、目の前に札束が置かれた。   ざっと二百万。   優雅は視線を横に向けた。   そこには、見惚れるような品の良い顔立ちの男がニッコリと微笑んでいた。   男はバーテンダーに優雅のグラスを指差し、   「同じ物を。」   と、頼んでいた。   そして男がまたこっちに振り向く。   視線がぶつかった。   男はまた微笑んでた。   そして煩く響く音楽に声をかき消されないように、優雅の耳元で囁いた。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加