君の左手

①

♪～♪～♪
入り口から客を知らせる音楽。

『いらっしゃいませ～』

店内に戻るとスウェットを着た女性が何かを探していた。

『３１５円になります。』

『あれ？』

自分のポケットを探り困惑した表情。
財布を忘れている事は目に見えて分かった。

…いや…
胸触って確かめてるけど、そんな所から札束出てきたら笑うから…

『ごめんなさい。財布忘れちゃったみたいです…』

不意に顔を上げた女性。
化粧もしていないし、格好も決して‘キレイ’とは言えないスウェット。
だけど元がいいのだろう。
‘美人’と言う言葉がピッタリだ。