プロローグ

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  こんなことなんてあるのだろうか。 私の目の前には“あの人”がいる。 そして“あの人”は 「あっ‥‥」 言葉をつまらせて立ち尽くす。 あの日から何も変わらない。 私を前にすると、きまりが悪いみたいに顔をゆがめる。 「お久しぶり。小原(おはら)先輩」 そして沈黙を破るのも私の声。 "もう慣れた。" "その態度にはもう飽きた。" そんなことを思いながら無表情で言葉を発した私に 「‥‥ごめん。」 彼はあの時と同じ言葉を発する。 ほんと変わらない。 そして、今にも事切れそうな声で言うんだ。 「美智子‥‥いや、お姉さんのことは‥‥ 「聞きたくありません。」 さえぎることも簡単で何もかもが変わらない。 それだけのことが私の心を更に冷めさせた。  
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