16人が本棚に入れています
本棚に追加
こんなことなんてあるのだろうか。
私の目の前には“あの人”がいる。
そして“あの人”は
「あっ‥‥」
言葉をつまらせて立ち尽くす。
あの日から何も変わらない。
私を前にすると、きまりが悪いみたいに顔をゆがめる。
「お久しぶり。小原(おはら)先輩」
そして沈黙を破るのも私の声。
"もう慣れた。"
"その態度にはもう飽きた。"
そんなことを思いながら無表情で言葉を発した私に
「‥‥ごめん。」
彼はあの時と同じ言葉を発する。
ほんと変わらない。
そして、今にも事切れそうな声で言うんだ。
「美智子‥‥いや、お姉さんのことは‥‥
「聞きたくありません。」
さえぎることも簡単で何もかもが変わらない。
それだけのことが私の心を更に冷めさせた。
最初のコメントを投稿しよう!