別離

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    静まりかえった車から出た時、 急かされるように母と父は 目の前の建物の自動ドアをくぐった。 私は後に続き、少し遅れて中に入ると そこは、薬品の匂いが強く香るほの暗い空間で、 わずかな頼りである非常口の緑色の明かりだけが 気味悪く朧気に廊下を照らしていた。 しばらくしてこんな静かな場所に 似つかわしくない足音がバタバタと こちらに近づいてくるのに気が付いた私達は 廊下の奥の闇に目をやった。 暗闇のなかでも目立つ白のシルエット。 その姿は私の予想を確信へと変えた。 看護師。 そこは紛れもなく病院だった。    
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