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つまり、魔力を封じられるということは、魔法という戦闘手段が一つ奪われるだけでなく、全体的な戦力低下にも繋がる。どれだけミズキが強いと恐れられていても、所詮は人間、それも女だ。身体能力だけではヴァンパイアには敵わない。
「致命的だな」
ヴォリアもそれは理解している。理解しているからこそ、彼女に魔封石を与えたのだ。
「お前が言ったんだ、覚悟は出来ていると。違うのか?」
その言葉にミズキは何も言い返せず、悔し気にヴォリアを睨む。
いくらヴォリアがミズキに求婚した者だとしても、二人が敵同士であることに変わりない。ヴァンパイアとハンター、殺し合う関係なのだ。加えてヴォリアは現王の息子であり有力な次期王候補。彼が仲間を守る為、敵であるミズキの力を拘束するのは当然のことである。
「チッ」
ヴォリアの言葉は正論である。ミズキは舌打ちするとヴォリアの胸ぐらを放し、腰の剣に手を伸ばす。言って駄目なら力尽くで、という魂胆なのだろう。しかし彼女の手が剣に触れる前に、解放されたヴォリアが彼女の首に手をかけ、そのままソファーに押し倒す。
「これも没収だな」
そう言って彼女の剣を奪い取り、傍観しているクラトスに向けて放り投げる。
勿論ミズキも抵抗するが、石の力で身体が思うように動かせず、簡単にヴォリアに抑え込まれてしまう。そのまま太腿のホルダーに入った銃にも手をかけられ、ミズキは更に激しく抵抗する。
「それに触るな!!」
激しい怒りの声を上げたことが合図になったのか、側で様子を伺っていたウォルトがヴォリアの喉元目掛けて襲い掛かる。
「おっ、と」
容赦のないウォルトの攻撃を軽々と避け、ヴォリアはミズキから離れる。しかしその手には既に彼女愛用の銃が二丁とも握られている。
「返して!!」
今にも襲い掛からんばかりのミズキとウォルトを前に、ヴォリアは余裕を滲ませている。慣れた手付きで銃を扱い、予め中にセットされていた銃弾の入ったカートリッジを外すと、それを踏み付けた。
「随分と古びた銃だな」
「いいから返して!!」
もう中に弾は入っていないのにも関わらず、ミズキは銃を要求する。その怒り様に、ヴォリア仕方なく空になった銃を投げ返す。
弾の無い銃などただの飾りに過ぎない。それでもミズキは、大事そうに再びホルダーに収めた。
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