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武器に愛着を持ったり固執することは珍しいことではない。たかが武器、されど武器。命を守りもすれば奪いもする武器、その重さを知る者は武器に思いを込める。古いながらも丁寧に手入れが施された銃を見れば、彼女がどれだけそれを大切にしているかが分かる。
「殺せない銃に何故そこまで執着する?」
しかし武器にはそれほど頼らず、己の身体を武器として戦うヴァンパイアには、そのような戦士の思いは理解し難い。しかも彼女が今持っているのは、弾のない銃、それだけでは意味をなさないもの。
「貴方に関係ない」
そんなヴォリアの何気ない問いに、ミズキは答えを返す気はなく、彼を威嚇しながら立ち上がる。
「そうかよ」
ヴォリアも、彼女からの冷たい反応に気を悪くするわけでもなく、平然とした様子で再びソファーに腰を降ろす。
「座れよ、もう何もしないさ」
魔力を封じ、武器を奪ったミズキから、これ以上奪うものはない。いくら魔物と恐れられたミズキであっても、今の状態でヴォリアと戦うのは分が悪すぎる。彼女自身もそれを理解しており、何よりこのまま立っていた所で余計な体力と時間を消費するだけだと判断し、渋々ヴォリアの向かいに腰を降ろした。警戒心は露にしつつも、ヴォリアに手を出す気はないミズキの様子を見て、クラトスとリーシャはヴォリアの後ろに控える。
「分かっているだろうが、お前がハンターとして此処にいる限り、武器を持つこともその魔封石を外すことも許さない。殺されたくなければ大人しく従え」
「丸腰でヴァンパイアと殺し合えって?」
武器も魔力も使えなければ彼女も武闘が達者な一人の女に過ぎない。それは敵しかいないこの環境下で死ねと言っているのと同じだ。
「それが嫌ならヴァンパイアとなり、俺の従順な妻になると誓うんだな」
そんなヴォリアの言葉に、ミズキはきつい視線を返す。
「……私を妻にする気なんて全くないでしょう?」
自分がただの暇潰しでしかないことは、ミズキ自身よく分かっている。恋愛というものに疎くとも、獲物を見る目というものには慣れている。ヴォリアもまた、そんな好奇心を隠そうともしていない。現にミズキの言葉にニヤニヤと笑みを浮かべている。
「可笑しなことを言う。俺の求婚が聞こえなかったか?」
しかし、自分の企みがばれていると知りつつも、彼は嫌みたらしくシラを切る。
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