†第07夜† 覚悟

20/20
前へ
/170ページ
次へ
「だがミズキ、覚えておけ」 ニヤニヤと笑うヴォリアは、その笑みを崩さぬままミズキに告げる。 「お前を生かすも殺すも俺次第だ。あまり俺の気分を害すような真似はするなよ?」 そう、現王の息子であるヴォリアが彼女を殺せと部下に命じれば、ヴァンパイア達は喜んで彼女を殺しにかかるだろう。いくら彼女が凄腕のハンターであっても勝ち目はない。 しかし、その程度の脅しに動じるような女ではない。 「悪いけど、人の顔色を伺って動くのは嫌いなの。私は私。どこにいようとそれは変わらない」 この強い意志こそが彼女の大きな力であり、魅力なのだ。 「ましてやヴァンパイアに従う気なんて更々ない」 魔力を封じられても、武器を奪われても、強い意志だけは揺らがない。 「言ったでしょう? 私の望みはヴァンパイアの滅亡だと」 ミズキは弾のない銃の先をヴォリアに向ける。 「殺したければ殺せばいい。けれど、貴方が私を殺す前に、私が貴方を殺すわ」 「……は! は、ははははは!! 話せば話す程面白い女だ!」 声を上げて笑い出すヴォリアを、ミズキは銃をしまいながら冷めた目で見る。 「俺を殺すか、それもいい余興だ。お前が俺に堕ちるのが先か、俺がお前に殺されるのが先か、見ものだな」 険しい表情の側近二人とは違い、ヴォリアは心底楽しそうに笑う。 「ミズキ・リリアス、この城の者を代表して改めて歓迎しよう。ようこそ、ヴァンパイアのアジトへ。せいぜい、短い命を楽しんでくれ」
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1331人が本棚に入れています
本棚に追加