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「で?どこ飲み行くの?」
「飲みは前提かよ!?しかもすっぴんじゃねえか!」
「うるさいなあ。あんたの失恋話聞くのに酒抜きで済む訳ないでしょ!それに化粧はいらないの。素材がいいから」
確かに素材はいい。落ち着いて観察すれば、すっぴんだとはいえ間違い無く美人だ。
「ジーマちょうだい」
「っておい!ここは居酒屋じゃねえぞ!飲みに行くんじゃないのか?」
恐るべきオンナだ。油断も隙もない。
「細かいなあ。」
レモンを瓶に押し込みながら続ける。
「オトコのくせにグチグチ未練引き摺ってさ。って…森野、なんか…痩せた?」
「ダイエットに失恋は効くぞ。マジで辛いけどな」
何をしていても悲しい。『心に穴が空く』とは比喩でもなんでもなく、本当にポッカリと空間が出来ていた。
「本気だったんだね」
「ジーマを片手に真面目な顔したってリアリティないぞ。」
「心配して駆け付けた友達相手に毒づく余裕はあるみたいだね」
僕はジーマがカラになるのを待って飲み屋に向かった。
「っておい!なにしてんのさ!」
「あのブラジル人!会計サバ読もうとした!アイツ絞ってコーヒー抽出してくる!」
「でねえから!汗くらいしか!」
「それじゃ何しに日本まで来てんのかわかんなくない!?」
あんたがわかんねえよ…
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