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僕と杉野は店を出た。
21000円
多分、随分オマケしてくれたんだと思う。
もちろん普段の食費からは考えられない金額だが、僕も杉野もやたらと酒が強いのだ。
「アソコ高いぞ森野~」
「バカ言え。何本ボトル転がってたか覚えてんのか?料理代なんか全部払ってないくらいだ」
「そう言えば私珍しく酔ってる~」
杉野が酔っている姿を杉野の友達は見た事がないそうだ。僕と飲みに行くと毎回酔っ払ってるのに。
「別に珍しくねえよ。明日は休みなんだろ?」
「なんだあ~。どっか連れ込もうってコンタンか~?失恋のはけ口に使うつもりだあ!けだもの~!」
「うっとうしいデス」
「…法廷で会おう!せいぜいいい弁護士探せ!」
「いいから肩貸せ。ひき殺されるぞ」
歩道もない狭い車道なので、車は僕らのすぐ脇を走っていた。
「むにゃあ」
「…しょっと。ほれ、マンションまで運んでやるから!」
「まだ…ダメで~す」
「まだ足りねえの?ベロベロじゃねえか」
「森野が元気出すまで飲むの!」
バカのクセにコイツは…
「元気だよ!しっかり歩け!」
ズルズル
「お前…歩く気ねえな?」
「るせ~!失恋やろ~。意地張ってばっかりだな~。」
「『~』が取れたら聞いてもらうから!歩かないとボタン押すぞ」
「それはダメで~す!止まってしまう~!」
つむじをボタンと呼び、押されたら動いてはいけない。
子供の遊びである。
小学校の頃の事なのによく覚えてんな…
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