ひねくれウサギ

6/9
前へ
/19ページ
次へ
「でも…もう誰も信じられない!」 「違う。それは君が素直になっていないだけだ。死の淵に立たされた時、君は何を考え、何を見たんだい?」 彼女は涙を流しはじめた 「それが君を救ってくれたものだよ」 僕は泣きじゃくる彼女にハンカチを差し出す 「年間、何人の兎心症患者が亡くなっていると思う?」 僕は彼女が落ち着くのを少し待った 「…分かりません」 「それが全世界で10人にも満たないんだよ。亡くなった方には申し訳ないけど、可笑しい話でしょ?」 彼女は驚きの表情を浮かべる 「君はね、ここに来る必要はなかったんだよ。そもそも僕はこの病院こそ、必要ないと思ってるけどね」 立場上、あまり大きな声で言えないので、小声で話した 「じゃあ…何で…」 「僕の手で救える命があるなら…僕は全力でその命を救いたい。ここにいるとそれが出来る可能性が広がる。とある兎心症患者の話があるんだけど…聞いてみる?」 彼女は黙って首を縦に振った
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加