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「でも…もう誰も信じられない!」
「違う。それは君が素直になっていないだけだ。死の淵に立たされた時、君は何を考え、何を見たんだい?」
彼女は涙を流しはじめた
「それが君を救ってくれたものだよ」
僕は泣きじゃくる彼女にハンカチを差し出す
「年間、何人の兎心症患者が亡くなっていると思う?」
僕は彼女が落ち着くのを少し待った
「…分かりません」
「それが全世界で10人にも満たないんだよ。亡くなった方には申し訳ないけど、可笑しい話でしょ?」
彼女は驚きの表情を浮かべる
「君はね、ここに来る必要はなかったんだよ。そもそも僕はこの病院こそ、必要ないと思ってるけどね」
立場上、あまり大きな声で言えないので、小声で話した
「じゃあ…何で…」
「僕の手で救える命があるなら…僕は全力でその命を救いたい。ここにいるとそれが出来る可能性が広がる。とある兎心症患者の話があるんだけど…聞いてみる?」
彼女は黙って首を縦に振った
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