雪見酒

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西浅草の裏通り、人通りはなく、知らなければ通る事もない場所。 そんな場所にある、『とも』と書かれた小料理屋ののれんを柏木はくぐった。 「いらっしゃい」 初老のマスターは、穏やかな声でそう言って、笑顔で柏木を向かい入れた。 柏木は調理場に一番近い卓に就いた。他に客は中年の男が二人いた。 「久しぶりだね」 温かいおしぼりを渡しながらマスターは言った。 「ご無沙汰してしまってスイマセン」 そう答えると、受け取ったおしぼりを思わず冷えた顔にあてた。
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