冗談でなければならない

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「あ!ハヤテさん、先程はすみませんでした!」 ミオが、トイレから出るなり。 ハヤテとばったり(はち)()わせた。 目が合ってすぐ(あやま)れば、彼女は首をかしげた。 そして『なんのこと?』と目をぱちくりさせた。 「いや、あの…さっき(ひる)(きゅう)(けい)の時に、その…、余計なことを言ってしまって…」 「ああ、あれか。気にしなくていいよ。どうせヒカルの笑えない冗談だから」 さすがヒカル。 どんぴしゃ当たっている。 ミオは迷ったけれど、言った。 「でもヒカルは本気だって言、」 「そんなわけがない」 「え、だけど…」 「たとえ本気だったとしても、」 「本気だったとしても?」 ミオが復唱(ふくしょう)する。 ハヤテは歩きながら続ける。 「不特定多数の相手と(せい)交渉(こうしょう)をするような奴は、お(ことわ)りだ」 すたすたと歩いて行くハヤテ。 その背を追いながら、ミオは苦笑(にがわら)った。
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