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さぁ、準備は整った。
顔には化粧という名の仮面、
ドレスは鎧、
あとは心に剣を構えるのみ。
これから始まるのは、週に一度、城で開かれる国の各地方を治める長を数十人集めての会議。
ちがう。
実質は会議という名目で自分の地位や名誉、財産を自慢するパーティーのようなものになり下がっているけれど。
形式も長テーブルに座って言葉を交わすのではなく、立食パーティーに近い。
王である父のあとを継いで、この会議に出席するようになって4年がたつが、私もずいぶん“器用”になったもんだな、と思う。
最初の頃は暴言吐いて、よくドルシェに外に追いだされて、
そのあと正座で3時間以上にわたる、説教。
あれは今思い出しても恐ろしい。
うん、恐ろしい。
「メイ様、」
名を呼ばて一気に現実に引き戻される。
「ミラス議長、こんにちは」
「あぁ、ごきげんよう」
手品師のような帽子をかぶり、白くなったご自慢のヒゲをなでながらにこにこと近づいてくる男性はミラス裁判議長。
ごきげんよう…って、イマドキどうなんだろ、その挨拶。
それにしても珍しい人が来たもんだな。
わざわざこの人が来るだなんて、なんかあるな。
「それで、どうですかな、考えていただけましたか?例の件」
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