8人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうした?
決着をつけようではないか『勇者』よ」
思考の淵にいた僕は彼の言葉で現実に引き戻された。
「どうして、名前で呼んでくれないんだ?」
「名前などもう無意味ただ、『魔王』と『勇者』が戦うだけだよ」
「そんな…もう昔には戻れないのか?
世界なんて征服しなくていいだろ!?
僕がなんとかするから、一緒に」
そう言うと彼は、少し哀しげな顔をした。
「もう、無理だよ」
「……そう、なのか」
―唐突に理解した。
その言葉が身体にストンと落ちると共に僕らは、
どちらともなしに剣を構え
戦闘を開始した。
正面からぶつかり
剣が高い音を立てる。
お互いが再び間合いをとりそこから剣の打ち合いが始まった。
自慢するわけでもないが、恐らく常人には見切れない。
右、左と剣を受ける。
お互い互角
このままでは決着がつかないと思ったとき
『フウハ』
「!……ッ」
魔王が魔法で僕の体を飛ばす。
僕はそのまま壁にたたき付けられた。
『我が名において
命ず
ここにあり…』
僕が起き上がったとき
魔王は魔法の詠唱を開始していた。
最初のコメントを投稿しよう!