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文久三年一月
日野宿本陣・佐藤彦五郎宅
「よしっ…!!できた。」
暗い屋根裏の中でそう呟くと大石は軽く伸びをした。
「ん…?」
ふと声がし屋根裏から部屋を覗くと天井を見上げながら女が言っている。
「大石君お疲れ様、お茶用意してあるから少し休憩したら?」
「あぁ、おのぶさん。ありがとうございます、今そっちに行きますから!!」
大石はそう言うとヒョイと屋根裏から降り、ノブと居間へと向かった。
大石鍬次郎は幼い頃に家を出て以来、日野で大工の見習いをしている。
最近では仕事を任せられる事もあり今日は日野宿名主である佐藤彦五郎邸の天井の張り替えをしていた。
「新年早々ありがとうね。今、歳三と近藤さん達も休憩してるわよ。」
そう言ったのは彦五郎の妻であるノブ。
彼女は後の新撰組副長、土方歳三の実姉でもある。
「平気ですよ!そう言えば最近土方さん達に会ってなかったなぁ…仕事も終わったし俺も稽古交ぜてもらおうかな。」
「歳三も同じ事を言っていたわよ。」
クスリとノブが笑い居間に着くと、たった今休憩したのか縁側で土方と近藤、そして沖田が汗を拭っていた。
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