『はぴすと』

　『はぴすとが、消えています……』
　そういったメールが、ファンの人から、届いた。最初は何のことかよく分からなかった。消えている？　小説が消えた？　そんなことがあるわけない。私は何もしていないし、何も知らない。私のケータイ小説『はぴすと』はランキング一位で、あと十日で書籍化が決定して、私の『Happy Story』が現実になって、私としての至高の状況が生まれるはず。それなのに、小説が消えている？　そんなことはありえない。私の小説は一位。『ひとつのシンジツの愛』もランキングが急上昇してきたけど、あんなふざけた方法で私の小説の人気を超すようなことはない。ありえない。私のケータイ小説の人気は盤石。安心 。何にも問題はない。私はこのまま、『はぴすと』を書籍化するんだ。私は幸せになるんだ。

――『ひとつのシンジツの愛』　一位――

『なんか急にはぴすとの掲示板が荒れ始めたんです……。しかも、どんどん酷くなって、はぴすとの小説の方のページにも影響が出てきちゃったみたいで……それで、はぴすとのページが潰れて壊れちゃったみたいなんですよ……。ホント、いきなりでした……。しかも完璧に壊れちゃったみたいで、修復不可能らしいんで すよ。はぴすとのファンである私にとってこれほど悲しいことはありません』