『はぴすと』

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 小説が消えている。ランキングから消えている。一位じゃなくなった。すべてが終わった。すべてが台無しになった。私の幸せは消えた。壊れた。壊された。なんで? 分かり切っている。何で消えたのか。何で荒れたのか。そんなことは分かり切っている。自慢気にあの藤垣美奈が説明してきた。一位になるために、『 はぴすと』を壊したと。楽しそうに愉快そうに悦楽な表情で。これで、私が一位だと明るい声で。私は声が出なかった。何も言えなかった。確かに、美奈が何でもするとは思っていた。でも、こんなことをするなんて考えられなかった。考えてなかった。だから、何もできなかった。藤垣美奈の欲望につぶされた。藤垣美奈の醜い汚 い希望の土台にされた。踏みつけられた。藤垣美奈の腐りきった小説を一位にするために。藤垣美奈のくだらない小説のために。すべてが、こわれた。確かに私が得ようとしていた幸せは作られたものかもしれない。私の努力の賜物ではない。『天使の本棚』という不思議なサイトの力で私は幸せを得ようとしていた。でも、結果と して、最終的に私は幸せになる筈だった。私の夢が叶うはずだった。ずっと夢見てきたことが現実になる筈だった。それがあの藤垣美奈の所為で。藤垣美奈さえいなければ。藤垣美奈がケータイ小説を書き始めた所為で。あの女の所為で。ふざけるな。私は本気だった。本気で書籍化させようとしていた。お金なんていらない。百万 円なんて捨ててもいい。ただ、彼との関係が欲しかった。
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