『はぴすと』

17/21
前へ
/21ページ
次へ
 二 四 三 七  藤垣美奈は馬鹿だ。どのパスワードも自分の名前、藤垣美奈からとってフジミナにしている。馬鹿の一つ覚えって言葉が、お似合いだと私は思う。でも、そのおかげで、私は行動に出ることができた。藤垣美奈はケータイ小説『ひとつのシンジツの愛』で、フィクションの内容を実体験だと言い張って書いている。最初 は、そんなありえないこと……と私も思っていたけれど、今では逆にそれを利用しようと思う。  『天使の本棚』の力で、フィクションが本当になる。ケータイ小説の内容が現実になる。その点から、全てに片をつけよう。藤垣美奈の小説を私が書いて、その主人公ミナのようになってもらおう。因果応報。実体験と言って書き始めたなら、ちゃんと実体験してもらわないとね。  『ひとつのシンジツの愛』のストーリーは聞いていた。よくできたストーリーじゃん! と頼みもしないのに語ってくれた。くだらない、非現実的なストーリー。考えて考えて思いついた、という割にはあまりにもお粗末なストーリー。でも、内容は覚えているから大丈夫。私が、藤垣美奈のかわりに『ひとつのシンジ ツの愛』を書いていく。更新していく。藤垣美奈が途中で気づいて、『ひとつのシンジツの愛』の内容を改変されたら、困る。当初、私に教えてくれたストーリーを、沿っていってもらわないと。そうじゃないと、いけない。  『天使の本棚』の仕組みは、ケータイ小説の主人公と同化していくのは、どうやらケータイ小説を登録した人。確か、そのはず、そういうことはきちんと調べてある。ちゃんと、藤垣美奈には責任を取ってもらわないといけないから。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加