『はぴすと』

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 私は学校に行くのをやめた。藤垣美奈の顔を見るのが嫌だった。見たくなかった。反吐が出る。叩きたくなる。でも、そんなことはできない。だから、私は家でただただ『ひとつのシンジツの愛』を更新し続けた。藤垣美奈に対する気持ちは膨らんでいくばかりだったけれど、それでも自分を何とか抑えた。藤垣美奈は 今、舞踊るように喜んでいる。その喜びを、一気に絶望へと叩き落とす。そう考えて、私を抑えた。今すぐにでも引き裂いてやりたかったけど、我慢しなければ、ならない。    一ヵ月という期間は、あまりに長かった。私にとって、考える時間というものは鬱だった。ふとした瞬間に、『はぴすと』のことが頭を過ったから。あの妄想の物語が、現実となった妄想が、幸せだった過去が、心の中で霞んでいく。綻びていく。それでも、その事実が、心の中から消えない。傷ついたまま、壊れたま ま残っている。私にとって、彼の存在は大きすぎた、彼との思い出は私の深いところに響きすぎた。だから、忘れられない。  あの日々は、いつまでも、私の心の中でボロボロになりながら生き続ける。  そして、その過去が私の中で現れるとき、あの藤垣美奈の声が聞こえてくる。 「関係ないし。私が幸せになればオールオッケーじゃん?」  あの腐れ女の声が、私の心で響くだろう。  ずっと、これからも。私が生きていく限り永遠に。  いつまでも、藤垣美奈の存在は消えないだろう。  藤垣美奈。  忌々しい。あの女だけは、私の手で終わらせる。
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