『はぴすと』

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「……ねぇ、美奈。私、彼氏ができた」 「マジ? やったじゃん! え、ええーっと、前言ってた男の子?」  あまりに嬉しくて、いつも話している美奈に報告した。美奈とは、高校に入ってから、それなりに一緒に時間を共にした友達。正直に言うと、美奈のことをそんなに好きになれないけど、それでも美奈が親しくしてくるぶんは、親しくするような仲だった。それなりに話を聞いてくれる相手は、やっぱり欲しかったから 。  美奈は素直に私を祝ってくれた。でも、美奈は驚いてもいた。たぶん、私と私の片思いの、彼氏になった男の子が、私と付き合うとは全く思っていなかったようだった。それは、私もそう思っていたし、当然と言えば当然のことだった。でも、少し違和感を覚えたのも確かだった。なんで? という疑問。だって、あま りにも急だったから。今までそんな素振りもなかったというのに、それなのに急に。  偶然にも、私のケータイ小説『はぴすと』がランキング一位になった、その時から。  最初は偶然だと思っていた。いいことが、重なったわけよね、と。でも、だんだんとおかしなことに私は、気付き始めた。ケータイ小説『はぴすと』の中の――つまり、私の妄想の中の彼と、実際の彼の言動が似てくる、というおかしな現象が起こり始めた。最初はデジャヴだと思った。でも、だんだんとリンクする部 分は増えていくばかり。妄想と、同じようになっていく。ケータイ小説の中のハルが、杉沢晴美と同化していく。  いくらなんでも、これはおかしい。そう感じるようになった私は、『天使の本棚』について詳しく調べた。すると、あることに気付いた。
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