第二章

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ディアは二歳を迎え、自我がはっきりとしてきた。フィリアもまた、十二歳になり、身も心も大人に成長していた。しかし、相変わらず、彼女の髪はショートヘアーだった。ディアは母親のマリアナの影響を受け、髪を伸ばしていた。肩まで伸びた髪をとかすのがフィリアの日常的な習慣となった。 < さら… > 寝癖のない髪を優しくとかしていた。 ディア:「ふわぁぁ…」 寝ぼけ眼(まなこ)のディアは大きな欠伸をした。 侍女①:「おはようございます、ディア様。昨晩はよく眠れましたか?」 ディア:「うぅ…ねむーいよー、ふぃー」 フィリア:「では、もう一眠りしますか?」 ディア:「むぅ…」 彼女はとことんディアに甘かった。叱る事もなく彼女がさせたいことばかりを最優先にしていた。ディアは頬を膨らませていた。 フィリア:「…どうかしましたか?」 ディア:「ううん…さんぽにいこうよ!」 フィリア:「はい」 < 外 > 庭に出て二人は草花に目をやりながら散歩を楽しんでいた。フィリアはディアが駆け回る後ろを一定の距離を保って追っていた。 < サワサワ… > 心地良い風の音が辺りを包み込んでいた。ずっと走っていたディアは元気といえど、二歳児だった。やがて、ピタリと足を止めてぺたりと地べたに座った。 ディア:「つかれたー」 フィリア:「大丈夫ですか?」 < すっ > 彼女はそういうと、屋敷から持ち運んできたリュックサックをストンと下ろした。その中に手を入れ、敷物を取り出した。 フィリア:「ディア様、地べたに座ると服が汚れますよ」 ディア:「えー、だいじょうぶだよ。よごれたらあらえばいいでしょ?」 < す… > ディア:「!!!」 その時ばかりは、ディアの言うことに賛成せずに彼女の身体を抱えて、敷物の上に座らせた。 ディア:「あー!」 < ゴソゴソ > ディアは敷物の上に座るといなや、ゴロンと横になった。それを見たフィリアの表情が柔らかくなっていた。リュックサックの中から、ディアが好きなクッキーを取り出すと彼女の目の色が変わった。 ディア:「あ~!ふぃーのてづくりくっきぃーだ!」 < す… > < ぱくっ > < もしゃもしゃ > フィリアは一枚を手に取りディアの口にクッキーを運んだ。 ディア:「おいしぃーっ!ふぃーのくっきぃーはさいこーだね!」 < にっこり > 満面の笑みで頬笑みながらディアはいった。フィリアはその表情が一番のお気に入りだった。image=176342533.jpg
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