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ディアに逃げられたフィリアは一人でマリアナの部屋に向かった。彼女は今回の件を主人に報告する義務があった。
< コンコン >
< カチャ >
マリアナ:「フィリア!」
< がばっ >
< ぎゅうううっ >
フィリア:「マリアナ様…苦しいです…」
マリアナは彼女が部屋に入ってくるなり抱きしめた。フィリアが無事なことは侍女①からの報告で分かっていたが、居ても立っても居られなかった。一通り彼女の身体を見てから安堵のため息を吐きながら、離れた。
それからじっとフィリアを見つめた。
マリアナ:「…侍女から話は聞いたわ。大丈夫?」
フィリアは口を噤(つぐ)んでいた。マリアナは彼女の頬に優しく触れた。
マリアナ:「あの子…ディアの事だけど…」
フィリア:「!」
フィリアはマリアナを見上げた。
マリアナ:「あの子はどうやら…反抗期に入っちゃったみたいなの…いつものように接するんじゃなくて、距離を置いてくれないかしら?」
フィリア:「…仰(おお)せのままに」
フィリアが見る限りマリアナも同じ待遇のようだった。ホッと安堵をした彼女だったが、ディアに逃げられた事は大きなショックだったのは確かだった。
しばらくしてマリアナはディアの母親から、女当主の顔になった。
マリアナ:「フィリア、先程の賊に関してだけど…誰かが雇ってたの?」
< コクン >
フィリア:「はい、賊の一人が口を割り、…ルベリアと」
マリアナ:「!!?」
マリアナはその名前を聞いて唖然とした。それから、彼女はフィリアを連れて夫の元に行った。
< カチャ >
マリアナはノックをしてから夫の書斎に入った。中には二十代前半ぐらいの長身の男がいた。髪は茶で瞳は青だった。彼はマリアナが入って来ると嬉しそうに頬笑んでいた。
マリアナ:「あなた」
夫:「やぁ、マリアナ…どうした…そんな険しい表情(かお)をして」
マリアナ:「ディアとフィリアの件は聞いたかしら?」
夫:「ああ…ありがとうな、フィリアちゃん」
夫は唯一、彼女の事をちゃん付けで呼んでいた。フィリアは礼をした。
フィリア:「ありがとうございます」
マリアナ:「…あなた、賊を雇っている主がわかったの」
夫:「何?!…俺達の知り合いか?」
< コクン >
夫はさっと顔色が変わった。それから顎(あご)に手を掛けて考え込んだ。
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