第三章

2/7

80人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
ディアに逃げられたフィリアは一人でマリアナの部屋に向かった。彼女は今回の件を主人に報告する義務があった。 < コンコン > < カチャ > マリアナ:「フィリア!」 < がばっ > < ぎゅうううっ > フィリア:「マリアナ様…苦しいです…」 マリアナは彼女が部屋に入ってくるなり抱きしめた。フィリアが無事なことは侍女①からの報告で分かっていたが、居ても立っても居られなかった。一通り彼女の身体を見てから安堵のため息を吐きながら、離れた。 それからじっとフィリアを見つめた。 マリアナ:「…侍女から話は聞いたわ。大丈夫?」 フィリアは口を噤(つぐ)んでいた。マリアナは彼女の頬に優しく触れた。 マリアナ:「あの子…ディアの事だけど…」 フィリア:「!」 フィリアはマリアナを見上げた。 マリアナ:「あの子はどうやら…反抗期に入っちゃったみたいなの…いつものように接するんじゃなくて、距離を置いてくれないかしら?」 フィリア:「…仰(おお)せのままに」 フィリアが見る限りマリアナも同じ待遇のようだった。ホッと安堵をした彼女だったが、ディアに逃げられた事は大きなショックだったのは確かだった。 しばらくしてマリアナはディアの母親から、女当主の顔になった。 マリアナ:「フィリア、先程の賊に関してだけど…誰かが雇ってたの?」 < コクン > フィリア:「はい、賊の一人が口を割り、…ルベリアと」 マリアナ:「!!?」 マリアナはその名前を聞いて唖然とした。それから、彼女はフィリアを連れて夫の元に行った。 < カチャ > マリアナはノックをしてから夫の書斎に入った。中には二十代前半ぐらいの長身の男がいた。髪は茶で瞳は青だった。彼はマリアナが入って来ると嬉しそうに頬笑んでいた。 マリアナ:「あなた」 夫:「やぁ、マリアナ…どうした…そんな険しい表情(かお)をして」 マリアナ:「ディアとフィリアの件は聞いたかしら?」 夫:「ああ…ありがとうな、フィリアちゃん」 夫は唯一、彼女の事をちゃん付けで呼んでいた。フィリアは礼をした。 フィリア:「ありがとうございます」 マリアナ:「…あなた、賊を雇っている主がわかったの」 夫:「何?!…俺達の知り合いか?」 < コクン > 夫はさっと顔色が変わった。それから顎(あご)に手を掛けて考え込んだ。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加