プロローグ

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『おぎゃあ、おぎゃあっ!』 その日は、雲一つ無い快晴の朝だった。ある町の裕福な家に、初めての跡取り娘が誕生した。その声は清々しいく、まるで鳥が囀(さえず)っているようだった。 両親との出会いを終えた赤子は、小さくて綺麗な寝具に寝かせられていた。その傍らには、幼い少年のような少女が立っていた。 少女は十歳ほどで、髪は黒く、瞳は紫色をしていた。髪型はショートカットだった。少女はゆっくりと赤子の方に手を伸ばそうとした、その時だった… ?:「…気持ち良さそうに眠ってるでしょ」 少女:「!!!」 < ぱっ > 少女は突然の声に驚き、手をさっと引っ込めた。ふっと声のした方を見てみるとそこには、見慣れた主人が居た。 少女:「…マリアナ様」 マリアナ様と呼ばれた人は二十代前半ぐらいの若い女性だった。髪は金で瞳は緑だった。髪の長さは腰まであった。マリアナは少女の母親と身分の違いを越えた無二の友人だった。今では、その母親はいない。少女が四歳の頃に病気で死別してしまったのだ。友人だったマリアナが彼女の分まで少女を可愛がった。しかし、それが逆効果だった。明るい子に成長するはずだった少女は、自分の殻に篭るようになってしまった。それから暫くして、マリアナは町で知り合った御曹司と結婚をしたのだった。 マリアナ:「私ね、その子の名を貴女に付けてもらいのよね…どうかしら?」 少女:「!?」 少女は目を丸くして、固まっていた。 少女:「そんな…この方は、マリアナ様の跡を継ぐ…」 < にっこり > マリアナは頬笑んでいた。彼女の目には少女が懐かしい友人が見えていた。 マリアナ:「…私ね、夢だったの。貴女に自分の子供の名前を付けてもらうことが」 < じーっ > 少女はマリアナと赤子を交互に見ていた。 少女:「…ディア。マリアナ様、この子の名はディアなんてどうでしょうか?」 マリアナ:「良いわね。…親愛…貴女をこの子…いえ、ディアの世話係に任命します」 少女:「!?」 名前を付けさせてもらった揚句、大切な赤子の世話係までもらい承(つけたまわ)った少女は固まってしまった。 < …スッ > マリアナはすやすやと眠る赤子を抱き、少女に抱かせた。image=172306176.jpg
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