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ニールは庭師の仕事を終えて部屋に戻っていると、廊下に人だかりが出来ていた。人だかりといっても、異常だった。先を見ると中心にぽっかりと空間が出来ていた。そのせいで人々は向かい合っている感じになっていた。それ以外にも様子がおかしかった。
< ひそひそ >
< こそこそ >
辺りの人々は声をひそめて囁きあっていた。
ニール:「…?」
彼は何事かと思い、近くにいた警備員に聞いた。
警備員①:「ニール様?!」
ニールはネグレクトの世話係として敬称で呼ばれていた。彼としては庭師としての心得を持っていた。周囲はニールが居たことを見ると安堵感が広がった。
警備員①:「あの…あそこには、休憩する為にベンチが設置されてますよね?」
ニール:「ああ…それが何か?」
警備員①:「あそこには…様子が危ない、フィリア様が…」
ニール:「!?」
ニールの顔色が変わった。彼女の許に行こうとしたが、警備員①が言った言葉にひかかった。
警備員①:「そ、それは…」
上手く説明できなかった警備員①と別れ、フィリアの許に向かった。彼等はニールに道を開けた。
< グゴゴゴ… >
フィリア:「…」
ニールは彼女の前に立つとナイフを投げるという行為はしなかった。まるで自分の前に誰も立っていないようだった。それ以上に誰も寄せ付けないような雰囲気を醸し出していた。
明らかに彼女は気持ちが沈んでいた。ニールは何も聞かずに彼女の隣に座った。
周囲:「!!」
周囲の人々は唖然して様子を伺っていた。
< … >
< …… >
< ……… >
彼は彼女の様子を窺うというよりも、ただ座っていた。
フィリア:「…何よ」
ニール:「別に何も」
フィリア:「…座らないでよ」
ニール:「此処は休憩する為のベンチだよ」
フィリア:「…今は私のベンチよ」
ニール:「俺は休憩してるだけさ。たまたま、君と同じ席にいるだけさ」
< ドキドキ >
二人のやり取りに周囲の人々が緊張していた。フィリアは冷たく彼に当たり、ニールは淡々と彼女に答えていた。
フィリア:「…わからないの?私は一人になりたいの」
ニール:「(…はぁ…)」
< スッ >
< ぱしっ >
ニール:「!」
ニールは彼女の意を尊重して席を立つと、フィリアは彼の上着の裾を掴んだ。彼以上に、フィリアは自分がした行動に驚いていた。
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