第七章

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遠巻きに見ていた警備員と侍女達は恐怖感よりも穏やかな雰囲気に変わっていた。フィリアとニールの関係は主人達と同じように温かな眼差しで見守っていた。 しかし、フィリアに気がある人々は際どい気持ちだった。 < すとん > フィリアは直ぐに手を離した。ニールはニッコリと笑い席についた。ニールは相変わらず、彼女に何も聞かなかった。 フィリア:「…どうしたら良いのかしら…」 ニール:「ゆっくりと話してごらんよ」 彼は優しく彼女に言った。フィリアは彼を見た。それから両手を組み合わせて膝に置いた。 フィリア:「…ディア様が婚約するの」 ニール:「そう…」 < スッ > 盗み見達:「!!!」 ニールは様子を窺っていた彼等を一瞥(いちべつ)した。流し目で睨まれた彼等は退散した。 フィリア:「あの方は…私が良いと言ってくれたときは、本当に嬉しかった」 ニール:「ああ、そうだね」 フィリア:「レクサス様とマリアナ様は私を信頼して下さっている。…だから、ディア様のお相手を選別してほしいって…」 < グィ > ニール:「!!」 俯きかげんだった彼女はニールに縋り付いた。 フィリア:「ねぇ、私はどうしたら良いの?今の気持ちで…あの方のお相手を、正しく導き出せるの?!」 ニールは縋り付いた時は目を大きくしたが、今は彼女の髪に触れて微笑んでいた。 ニール:「俺は、選出ミスじゃないと思う。ディア様の気持ちと性格を熟知した君なら、大丈夫だよ。…迷った時には俺が居るんだし」 フィリアはニールから離れて小さな咳をした。それは彼女の照れ隠しだった。 フィリア:「…私の相談役が、貴方なの?なんだか…不安、ね」 ニール:「はぁぁ…」 彼女はため息を吐いた。ニールは肩をすくめた。 ニール:「でも俺は、君から頼りにされたら嬉しいけどね」 < すくっ > 彼は席を立ってその場から離れた。一人になったフィリアは自分の心が軽くなっていることに気がついた。自然と口許に笑みが零(こぼ)れていた。 フィリア:「ニールのくせに」 彼女はそう言ってその場を後にした。
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