第七章

6/9

80人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
それを間近で見ていた隊長は、彼女には逆らわない事を心に決めた。 全メニューを熟(こな)せたのは思ったとおり、フィリアだけだった。 フィリア:「これを難無く熟せたら問題は無いわ」 隊長:「お、おう」 < キラッ > 彼女の額には汗が浮かんでいた。それがまた、艶やかだった。 < サラッ > 彼女は額にくっついた前髪を左手でかき上げた。 < ドキッ > その場にいた警備員達は胸が高鳴った。またしても、盗み見をしていたニールは顔が赤くなっていた。 隊長:「フィリ、いつ出発を?」 フィリア:「用意が整ったら直ぐにでも」 明朝、フィリアは皆が寝静まる頃を計らって屋敷を出発した。 フィリア:「!!」 屋敷の出入口には居るはずのないニールが立っていた。 ニール:「行くのかい?」 フィリア:「どうしてそこに…」 ニールは頬笑んだ。 ニール:「君との付き合いは五年だよ?フィリアさんの行動は熟知してるよ」 フィリア:「そう…ディア様…をよろしく頼むわね」 < コクン > ニール:「ああ。君も…気をつけて…無茶はしないで」 フィリア:「えぇ」 < かぽっ > 馬に跨がっていた彼女は馬を進めた。フィリアが見えなくなるまで見送ったニールはしばらくそこに立っていた。 ニール:「…行ってらっしゃい…フィリア」 < パカラッパカラッ > < サラッ > 馬の蹄の音とたて髪が周囲の音を占めていた。フィリアは何も考えずに馬を駆けていた。しばらくすると辺りが薄明るくなっていた。 フィリア:「(さて…第一の候補者は…商人の次男か)」 彼女は馬を休ませている間に行き先を考え込んでいた。手元には候補者の写真や絵が一つも無かった。まずは1番遠い場所からせめる事にした。 < 二週間後 > マリアナの屋敷には凄腕の怪盗の話が舞い込んできた。その怪盗は何の目的があって金持ちの屋敷に忍び込むのかが分からなかった。怪盗はあらゆる警備員達の目を憚(はばか)って屋敷に侵入する。しかし何も盗っていかず、金持ちの息子に質問攻めにするという手口だった。息子の話だと、怪盗に出会う前には悪寒が絶えなかったという。その他にも、質問攻めにされるのは決まって、皆が寝静まる頃だという。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加