第八章

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フィリアとの連絡が途絶えて一週間が経たずして、ディアの様子がおかしくなった。 ディア:「…」 彼女の日課は屋敷中歩き回りフィリアを捜した。何処にも居ないことを確認すると、フィリアの部屋に駆け込んだ。 フィリアの部屋は二十歳の娘とも思えないほどの殺風景で、ベッド、机、タンス、クローゼット…生活に必要最低限の物しか揃えられていなかった。彼女はフィリアのベッドで俯せになった。枕に顔を押し付けていた。 ディア:「フィー…」 ディアの様子を見ていた侍女や警備員は散歩や遊びに誘ったが、結果は惨敗だった。両親や弟、庭師が別の物に興味を引かせようとしたが失敗に終わった。 ディア:「フィー…何処に行っちゃったの…?」 < ぎゅうぅ… > 彼女は身体を起こし、枕を抱きしめた。今では彼女の笑顔を見たものは誰も居なかった。両親でさえも、フィリアの居場所さえ分からなかったのでどうすることも出来ないでいた。 < 一ヶ月後… > 日課になっていた屋敷の捜索は一切しなくなっていた。彼女は朝から晩までフィリアの部屋で過ごした。フィリアの匂いが残るその部屋に居座っていた。そこまでは大目に見ていた両親だったが、彼女がフィリアの部屋に近寄る全ての者を追っ払うようになったのをみると、本当にディアの心配をし始めた。部下に命じてフィリアの居場所を捜索をしていると、ある怪盗の情報を掴んだ。 < ドドドドド… > < ドバーン! > 情報を掴んでくる部下達にディアはいつも猪の様に突撃した。 ディア:「フィーは?!!」 部下:「ぐ、ぐるじいでず…おじょうざま…」 彼女は部下の首を締めるように掴み寄った。今の彼女は十歳とは思えないほどの力を発揮していた。 ディア:「…フィーは何処?」 部下:「…」 有力な情報を得られない部下達はことごとく、彼女に折檻(せっかん)された。幼い頃からフィリアの訓練を見てきた彼女にとっての腕捩上(うでねじあ)げはおてのものだった。 部下達:「ヒィィッ」 部下達はそれが恐ろしく、死に物狂いでフィリアの情報をかき集めた。 しかし、彼等の情報は役に立つことはなかった。 怪盗の情報が止んで二週間後、それは一枚の手紙で知らされた。
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