第九章

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二ヶ月後、ディアとゲンテルは正式に婚約した。正式とは言っても、二人は未成年だったので世間的に認められただけだった。彼等は周りが羨むぐらい仲が良かった。ゲンテルと義理の兄弟になるネグレクトとはまるで本当の兄弟のようだった。 婚約してもディアとゲンテルは別々の屋敷に住んでいた。 < マリアナの屋敷 > ディア:「フィー」 < ばんばんばん > ディアは玄関前で座り込んでいた。彼女は一頭の馬が傍にいた。大理石の敷石をばしばしと叩きながらフィリアを呼んでいた。 フィリア:「ディア様、そんなに叩くと手を傷めてしまいますよ」 < すっ > フィリアは音もなくディアに近寄り、ひざまづきながら彼女の片手を持って自分の両手で包み込んだ。 < にっこり > フィリアがそういって微笑むとあまった片手でディアが彼女の手に乗せた。 ディア:「えへへ」 フィリア:「さぁ…行きましょうか」 < パカラッ > フィリアがディアを抱えて馬に乗せると、彼女はその後ろに乗った。そしてそれから馬を進めた。 ディア:「ネギーにゲンテルを独占させるのは許せないから!」 フィリアはネギーこと、ネグレクトに対しての嫉妬は既に消え、今では三人がこれからも仲良くいてくれる事を心から願っているのは言うまでもない。楽しげに二人の事を話す自分の主の表情や背を見ながらしみじみと想っていたフィリアだった。
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