第九章

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ディアとゲンテルが婚約をしてから五年の月日が経った。子供達は大人へと成長の過程を進んでいた。二人は十五歳になり、正式な婚約出来る年齢を迎えていた。弟のネグレクトは十三歳になり、レクサスの実家を継ぐ勉強に励んでいた。フィリアはというと、ニールと共に独身を貫いていた。フィリアは警備員をまとめる隊長から隊長の座を引き継いだ。ニールは相変わらず、庭師のままだった。彼女は二十五歳、彼は二十八歳を迎えていた。屋敷中は二人が結ばれることを望むが、フィリアがそれを受け入れないのは目に見えていた。 < マリアナの屋敷 > ディア:「嫌よ!私は貴女が結婚するまでは結婚はしないから!!」 フィリア:「ディア様!」 < バチバチ > 今年に入り、フィリアとディアがこうした言い合いが目立った。その側には優雅に紅茶を啜(すす)るネグレクトとゲンテルが居た。ゲンテルは十五歳になると同時にこの屋敷に住み込むようになった。彼は義理の兄というよりもネグレクトの良き友人になった。 フィリア:「私は結婚する予定も相手もいません。その前に、結婚するつもりはございません」 ディア:「だったら、私もゲンテルとは結婚しないわよ!」 フィリア:「ディア様?!」 < ずずっ… > < チラッ > 紅茶を啜るネグレクトは世話係と姉を見てため息を吐いた。 ネグレクト:「ホント…二人は飽きないよね」 ゲンテル:「仕方ないさ。二人は歩み寄るという方法を取らないんだし」 ネグレクト:「でも…」 ネグレクトは心配していたが、ゲンテルはいつも通りだった。 ゲンテル:「でも…は無しだよ。二人はあれが日課なんだ」 ネグレクト:「ニール」 < ぱっ > ネグレクトは紅茶のおかわりを持ってきたニールを見た。彼は大人の落ち着いた雰囲気を醸し出していた。 ニール:「…ん?」 声がしていた筈のフィリアがその場から居なくなっていた。彼が頭を傾げているとディアが言った。 ディア:「あ、フィーが逃げた!」 ゲンテル:「…逃げ足は流石に早いね」 ネグレクト:「ニール…」 ネグレクトは哀れみの眼差しをニールに向けた。彼は苦笑していた。
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