イクサオニ(エルヴン過去話/シリアス)

3/9
前へ
/157ページ
次へ
そんなある日、俺はあいつに出会った。   「助けて…や…やだ…怖い…怖いよ…っ…」   あまりに弱々しいその声に、俺は自然と手を延ばしていた。   「…一人でいるから怖いんだよ。ほら、こっち来な。」   柔らかい手を俺は初めて触った。俺達の手は痩せてゴツゴツしてるから…。   「泣くなよ。あんた俺より年上だろ?恥ずかしくねぇの?」   身長は俺より少し高かった。髪は雑に切られていてまちまちな長さだったけど…サラリとした紺の髪は俺達よりずっと綺麗だった。   「うっ…ひっぐ…っ…っママは…?ママはどこに行っちゃったの…?」   高い声のその子は泣きながら俺の顔を見た。 本当のこと…言ったらこいつは…また泣くだろうか…   でもここで暮らすには   これくらいで負けちゃダメなんだよ。   「あんた、何も知らないんだな。…捨てられたんだよ?あんた。ママはもういないんだよ?」   どれだけ…傷付けたのか不安になる。傷付けることは…嫌いだから。 「…嘘…だってママは…ここから出ちゃダメよって…迷子になったらダメだからここにいなさいって…。すぐに…戻るからって…」   今にも壊れそうな表情に…逃げたいなんて思った。 でも逃げるのも嫌い。 だから 俺は手を掴み、出来るだけ日の当たる場所に連れて行った。   「あんた、名前教えろ!」 「うぇ…っ…?ジ…ジン…。ジン・クライアン…。」 「よし、ジン!今日から俺、ジンの友達になる!!」   馬鹿みたいに叫ぶと ジンは 笑った。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加