―出会い―

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扉はドアノブを回しても叩いても開かなかった。 力任せにおもいっきり体当たりしてみたが軋むだけで開かない。 コトネ『しかたない。制服が汚れるのがムカつくけど上るか』 便器の上に乗り、流す取っ手部分に足をかけて扉の上から顔を出した。 『………』 私の閉じ込められた扉の前に人がいた。 驚いた私は、そいつが何をしているのか観察した。 『………』 そいつは、物音一つ出さずにドアノブに何かしている。よく見るとドアノブを固定している紐を解こうとしていた。 しかし指ではなかなか外れないようだ。 『……』シャッ パサ 一瞬そいつの指が紐をなぞったと思ったら、あんなに苦戦していたはずの紐が呆気なく床に落ちた。 そいつは、ありえないほど静かにトイレから出ていってしまった。
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